人体 失敗の進化史 (光文社新書)



人体 失敗の進化史 (光文社新書)
人体 失敗の進化史 (光文社新書)

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シーラカンスが生きた化石のわけ

TVでシーラカンスが出て来るたびに、何でこんなサカナが「生きた化石だ」と
騒がれているのか、正直、その価値がよくわからなかった。
確かに、イカツイので、古そうなサカナには見えるが、私にはそれだけの
印象しかなかった。

でも、この本を読んで、シーラカンスの価値がよくわかった。
鰭(ヒレ)の中に骨が入っているのだ。そしてその鰭は、海から陸に上がった
動物の四肢に進化するまでに、それほど時間はかからなかった。
つまり、シーラカンスは進化の重要な分岐点に位置する「生きた化石」なのだ。

このような話が、本書の随所で展開されていて、知的好奇心が大いに
刺激される本である。進化や生物、それから、われわれ人類が何者かに
ついて興味のあるすべての読者に勧めます。

以下は蛇足。
筆者の「死体」解剖学にかける情熱は半端ではない。
こんな学者がまだ日本にいたのだと、科学者の「シーラカンス」を
見つけたような気になってしまった。ぜひ、日本の学会を変えてほしい。

ひとつだけ疑問。
筆者は動物死体の解剖からしかわからないことがあるという。
それには反対しないが、なぜ、回数をこなさなければならないのか。
貴重な動物の遺体であれば、1回の解剖で骨の髄までシャブリつくせば
いいではないか。なぜ、何度も死体を刻む必要があるのか?
そこのところ疑問が残りました。
動物園に行こう!

動物の進化を知りたいと思うとき、化石を発掘してみるのもいいかもしれない。
しかし著者は、今世界に溢れる生物達こそが、進化の爪あとを最も残してくれていると、語っている。
しかも、進化は起こるべくして起こったというより、仕方がなく起こったという意味合いが強いのである。
進化とは大げさなものでなく、「そうするしかないな」という生物達の諦めのため息が集まった設計図であると。それは以下の質問を見てもらいたい。
骨はどうやってできたのだろうか?
魚が陸上にあがったのは偶然!?
こうもりと鳥の違いは何だろうか?
ワニのあごから人間の耳ができた!?

もしこの質問に対しての回答を持たない方なら、幸せである。
なぜならこの本を、「骨の髄まで」充分しゃぶりつくすことができるからだ。

熱意と親しみやすさと、なによりもプロフェッショナルを感じさせてくれる著者と、一緒に生物誕生から旅に出てみよう。
面白い

まず読み物として実に面白い。
そして行間からにじみ出てくる作者の、学究者的情熱がいい。
生物としての人間を「哀しきモンスター」と切って捨てる、一種痛快さに打たれた。
今の世の中に、こういう熱意も才能も志も兼ね備えた学者が、ちゃんといるというのは心強い。

素材は抜群に面白い

素材はものすごく面白い。一般に神の最高の創造物(キリスト教徒でなくとも、人体が素晴らしい造りであるとは思っているだろう)と考えられているヒトや他の脊椎動物が、進化の過程のいかに場当たり的な改造の結果であるかを解説した本である。この辺を仔細に勉強するだけで、創造説とかインテリジェントデザインとかはお話しにならないのは明白だ。例にあげられている背骨の進化史なんて大好きだ。脊索動物が、神経系を維持するために脊索の周りにカルシウムをストックしていったのが、ある程度たまると突然構造材としての意味が出てきて、強く速い泳ぎを獲得する。このように、進化は先のことを考えて進んだのでは決してなく、その時その時の場当たり的な適応が、生み出した思いがけない結果の連続なのだ。

と、「素材は面白い」のだし、語り口も悪くはないと思うのだが、私はあまり好感を持てなかった。趣味の問題だとは思う。しかし、解剖学者であるという強い思い入れからか、たぬきの遺体を前にして語り始める、少々おどろおどろしい雰囲気の出だしや、大学でお金儲けに直接関係のない分野の荒廃を訴える最後は、一番面白い話題を見えにくくしているように感じる。骨の進化の解説についても、図解がイマイチよくなくて、細かいところがすっと入ってこない。進化学ではなく動物解剖学であると自分を規定し過ぎなんじゃないかなあ。

いえ、本当に「素材は面白い」のですから、お勧めします。だって、自分の体がどのように出来上がってきたのかを知りたいでしょ?
様々な観点から面白い

タイトルから期待したのとは異なっていたが、期待以上におもしろかった。読み方としては、@解剖学者の考え方、日常、A動物の体の進化史、B人間の進化、人体の成功と失敗という3つの観点から読んだ。どれも私には初見のことばかりでおもしろかったが、とりわけ、ABでいかに進化が急がれ、その場しのぎであったかを細部から示されたことが興味深い。とりわけ、人体が400万年という短期間で、四足歩行から二足歩行になったための体各部の大転換、無理な補修という説明は、人間の体の構造にいろいろ持っていた疑問を解いてくれるものであった。解剖学者らしい卓見である。なお、最後の地球を憂うというような書きぶりは私には蛇足であった。淡々と終わり、あとは読者に考えさせたほうが良かったのではないか。



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