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ソ連=党が所有した国家―1917‐1991 (講談社選書メチエ)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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ソ連という国家はなんであったか
東西冷戦の終結から一回りを経て、ソ連という国家は何であったのか、政治史や経済史、文明史など、様々なレベルで考察が進められているが、明快な答えはまだないというのが穏当なところであろう。
このような問題に対して、本書はモロトフという個人に焦点を当てて、ソ連の歴史を考察していく。ソ連の成立から崩壊までをこのようなユニークな観点から探ることで、党が所有していたという歴史上類稀なその性質を明らかにする。
その着眼点のユニークさ及び考察の濃密さが本書の特徴である。
ソ連史のベールをはぐ
特定の「思想」のもとに「かくあるべし」という強固な意思のもとで作られた人工国家。それがソ連である。思想を現実化する過程で発生する矛盾を、思想ではなく悪意ある内部関係者のせいにし、片っ端から弾圧していったソ連史を見るとき、その「悪」は、決して個人のパーソナリティのためではないことがはっきりする。 農民ソビエトの支持で政権掌握に成功したボリシェビキが次になしたことは農民の徹底的な弾圧だった。政権掌握時に約束した農地所有権を取り上げ、集団農場で強制労働をさせ、貨幣ではなく暴力をもって農村から食料調達を行ったことを、「貨幣の死滅」だの「市場の廃絶」として擁護する共産主義者たちの心理とは、いったい何なのだろう。過剰な食料徴発のために、農村では餓死者が出ているのである。
抑圧者を軸にしたソ連史
レーニン・スターリンの時代に人権抑圧の中心人物となったモロトフの記録は、欧米やソ連国内にも殆どないそうです。自伝を書かず、公の場で極端に口数が少ない人物について記すのは、下斗米氏もさぞ大変だったでしょう。ただし、そのおかげで、本書は読み応えのある1冊に仕上がっています。下斗米氏の著作は今までに数冊読みましたが、本書では、抑圧の中心にいた人物の視点を盛り込むことで、より一層ソ連の矛盾をトレースし、確認し易くなったと言えます。レーニン時代から広範囲に普及していた、党官僚制、大量処刑、飢餓、強制収容所。さらに、それに伴う数々の矛盾。具体的には、労働者が殆どいない場所で労働者革命が起こると言う神話、革命を担った農民に対して仕掛けた戦争、経済破綻を社会主義のモデルと見なす情けなさ、等等。これら様々な矛盾が、スターリンの時代でピークに達し、フルシチョフ以降の時代も解消できず、やがては国家自体が崩壊に至るまでの、抑圧的な国家の軌跡が丁寧にまとめられていると思います。 1つの政党によって70年以上私物化された国家というのは、世界史の中でも珍しい。言い換えれば人権蹂躙が頻繁に横行した訳ですが、それ故にソ連の無数の悪事は、体制そのものの罪であり、特定の個人に責任転嫁できるものではない。教会関係者の公開銃殺をトロツキーが提案し、レーニンとスターリンがそれを熱烈に支持したという挿話は、共産主義政権を担うものは誰であれ、抑圧に手を染め易い事を示しています。 モロトフはレーニンやスターリンのように頻繁に表舞台に登場した訳ではなく、トロツキーやブハーリンのように明瞭な体制批判を行った訳でもない。従って比較的マイナーな人物ですが、数々の人権蹂躙に常に関与していた彼の視点から、ソ連という、非人間的なシステムの歴史を振り返るのも無駄ではないと思います。
良書だと思う
それほどメジャーな人物とはいえないが、 しかし、言うまでもなくソ連を語る上では欠かせない ビャチェスラフ=モロトフを中心に、 ソ連の成立から崩壊までを描いた本である。ソ連の歴史全体を、 それほど厚くもない本書のみで理解しようというのはとうてい無理な話だが、 モロトフというひとりの人物の視座に立ち、 十分にソ連という国家の軌跡を読み取ることができる。 ソ連史のひとつの切り口として読んでみてはいかがだろうか。
講談社
アジア冷戦史 (中公新書) 現代ロシアを知るための55章 (エリア・スタディーズ) 詳解 独ソ戦全史―「史上最大の地上戦」の実像 戦略・戦術分析 (学研M文庫) 今こそマルクスを読み返す (講談社現代新書) 知られざるスターリン
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